どうも、タニアリと申します。
「有隣堂しか知らない世界」というYouTubeチャンネルをご存知でしょうか。書店・有隣堂が運営している、文具や本の世界をゆるやかに紹介してくれるチャンネルなんですけれども。にしおかすみこさんがゲストで出ていた回で、「高級なサインペンみたいなペン」として紹介されているのを見てしまったわけなんですよ……。その一言だけで頭にひっかかって、しばらく離れなくなってしまいました。
そのペンが、KOKUYO ファインライター WP です。気が付いたら楽天でポチっていました。¥4,840を。ペンに。
デジタル全盛のこの時代ですが、アナログなメモや手書きの力ってやっぱりバカにできないと思っているんですよ、個人的に。タブレットやスマホにどれだけ機能があっても、紙にペンを走らせるほうが頭に入るというか、なんか整理される感覚というか……。うまく言えないんですけど、そういうの、ありませんか。
まぁ、それも後付けの理由で、単純に動画を見て欲しくなっただけかもしれませんが。
購入から約8ヶ月。ブルーブラックのインクは初期充填のまま、まだリフィルを一度も買っていません。そのあたりも含め、このペンとの付き合い方をちょっと語らせてください。
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デジタルで全部できる時代に、なぜわざわざ紙に書くのか
アナログメモの話を少しだけさせてください。
紙に手書きが速い、というのは別に「デジタルが使えないから仕方なく」という話ではないんですよ。たとえば図解して説明したいとき。パソコンでタッチパッドやマウスを操作して、オフィスソフトのオブジェクトを並べて……というより、紙にペンを走らせるほうが圧倒的に速くて直感的なんです。
仕事中に私用タブレットを使おうとするとBYOD申請が要るというのもあって、結果的に紙とペン一択になってるんですが、それが全然不自由じゃないんですよね。むしろ、その場で描いて見せるほうが伝わりが早い。
で、そういう場面で長年使ってきたのが、ぺんてるのサインペンでした。ブレスト(というと聞こえはいいけど、要は何でも書き殴ること)するときとか、あの書き味のよさとか、素早く書いても線が掠れないとか。とにかくぺんてるのサインペンが最強だなと思っていたわけです。
ある時、ふと気がつくんですよ。「このサインペン、もしかしてだけど安っぽいな?」と。
いや、営業でもないのに筆記具の高い安いなんか誰が気にするのっていう話ではあるんです。しかも業界はIT。この業界はアナログなことが大嫌いで、手書きなんか非効率の最たるものとして忌み嫌う人が大勢いる。そんな中で私は新人の前でもサインペンを使う始末で。なんとなく「こなれ過ぎてて一周回って年寄」感の演出になっていないか、と急に気になってきてしまいました。
サインペンはあらゆる面で最強です。揺るがない。ただ、あまりに強すぎる。アナログを極めし者が一周回って最後にたどり着く感がありすぎて、アナログの王者でありすぎるんですよ。故に人前で使うのが急に怖くなりました。
ジェットストリームくらいじゃないとダメだ、SARASAくらいじゃないとダメだ。アクロインキのボールペン程度ですら憚られる。Vコーン?下がってろ、お呼びでないんだ……みたいな感じで、何が自分にとって「普通」なのか謎になってきたわけです。
そんなぐるぐるが頭の中にあったところに、「高級なサインペンみたいなペン」という一言が刺さったわけです。
外観を確認してみる。ペン先が安っぽいのは愛嬌ということにしておく

本体はアルミニウム製のつや消し仕上げ、ブラックです。金属製と聞くと重たいイメージがあるかもしれませんが、持ってみると意外と軽くて、ちょっと拍子抜けするくらいです。チープさはなく、「あ、ちゃんとしたペンだな」という感触はちゃんとあります。
クリップは可動式で、少し厚みのあるものにも挟み込めます。胸ポケットに差しても外れにくく、手帳の表紙に挟んでもしっかり保持してくれる。可動式かどうかで使い勝手がかなり変わるので、これは嬉しいところです。
キャップを外すと、グリップ部分が透明なアクリル素材になっていて、中のリフィルが見えます。なんとなくメカっぽくて、嫌いじゃないですよ。
ただ、キャップを外した状態でペン先を見ると……金属部分が、なんか安っぽいなぁと思わなくもないんです。ボディの質感がいい分、ペン先だけ少し浮いて見える感じがしまして。
まぁまぁまぁ、キャップを開けさえしなければ全体的に高級感に溢れていると思います。開けなければ。

本体は持ち歩くとすぐ傷がつきそうだなとは感じました。マット仕上げのアルミは質感がいい反面、傷が目立ちやすい。バッグにそのまま放り込む使い方には向いていないかもしれません。丁寧に扱う前提で買うペンです。
あと一点だけ。キャップを後ろに差して書くと後ろ荷重になって、重心がペン先から離れてしまいます。一般的にはペン先側に重心があったほうが書きやすいので、キャップは外して書くほうが自然かもしれません。
書き心地は「永遠の一本目」みたいな感じ、とでも言えばいいか
このペンの書き心地を説明するのが、なかなか難しくて。
新品のフェルトペン(サインペンの類)って、開封直後の一本目が一番気持ちよく書けますよね。ペン先がまだへたっていなくて、インクが勢いよく出てくる、あの感じ。ファインライターは、その「一本目の感覚」がずっと続くんですよ。使い込んでもペン先が変わらない。「新品下ろし立て一発目が永遠に続く」というイメージです。
インクの出る仕組みが万年筆と同じ毛細管方式なんです。ペン先の樹脂製チップに微細なスリットが入っていて、そこを毛細管現象でインクが染み出してくる。ボールを転がしてインクを出す普通のボールペンとは、根本的に仕組みが違うわけです。

乱暴に位置づけるなら、万年筆とフェルトペンの中間、という感じでしょうか。硬めのフェルトペンで書くような感覚なんですが、ペン先の樹脂チップがわずかにしなるので、ハネとか払いのような表現もできる。筆圧をほとんど必要としない点も、フェルトペンに通じるものがあります。
書いた線は太めの水性ボールペンくらいの太さで、ブルーブラックのインクは紙の上でくっきりと発色します。さらさらと書いても線が掠れない。このあたりは、サインペン時代に感じていた「素早く書いても線が死なない」という安心感に近いものがあります。
どちらかといえば滑るような書き味なので、長い文章を書き続けても手が疲れにくい。頭の中を整理しながら書く、みたいな作業にも向いていると思います。ブレストで書き殴るのにも、実はちょうどいい……。
ちなみにペン先の樹脂チップはヘタりにくいらしく、8ヶ月使った今も書き始めの感触が変わっていません。まだリフィルを一度も替えていないというのもありますが、そっちの話はあとで嫌というほどします。
使う場面が決まってくる。おっさんがサインペンで図解するには、ちょっと様子が悪い
実際のところ、使う場面はかなり絞られています。
一番出番があるのは、仕事で同僚や新人に説明するとき。口頭よりも図を描いたほうが早い場面が業務には多くて、そういうときにファインライターを取り出します。私は客前に出るような仕事ではないので、ほぼ内部折衝の場面だけなんですが。
なぜジェットストリームやSARASAじゃないのか、という話をしましょう。この二本、実はビジネスの場において最強の選択肢だと個人的には思っています。誰もが知っていて、誰もが使っていて、使っていても誰も何も思わない。ある種の「透明性」があるんですよ。持っているだけで空気になれる。
対して、アクロボールあたりになるとやや一般知名度が落ちてくる。Vコーンとなると、もう知る人ぞ知る域で、デジタルに染まりきった職場の同僚の目には「こいつ文具好きだな」と映るリスクがある。サインペンに至っては、ビジネスの筆記具に見えない。IT業界でアナログ全力のおっさんを演出したいわけじゃないんです。周りは敵だらけですので。
じゃあ高級ペンはどうかというと、これが面白いポジションで。確かに文具好きっぽさはある。でも同時に「社会人としての矜持が持ち物に表れている人」にも見えるんですよ。外聞を気にする年齢になった、という演出。まだギリギリ30代なので発展途上の余地も残っているという余裕もある。
つまりファインライターを使うことで、サインペンの書き味を得つつ、デジタル暴徒たちの前では「社会人ぶってるおじさん」を装えるわけです。いいとこ取りというやつです。

消したい文章にはフリクション、素早く書き殴るにはSARASA、大事な文章にはファインライター。そういう役割分担が、今の私の引き出しの中のスタンダードです。ペンだけで引き出しが賑やかになってきた。

もう一つの使い場面は、大事に書きたい文章のとき。奥さんにちょっとした手紙を書いたり、子どもの成長日記(というか一言メモみたいなもの)を書いたり。こういう心を込めるタイプの文章には、すごく合っています。一筆一筆丁寧に書くこともできるし、さらさらと流すこともできる。

いつだって丁寧な暮らしのそばに、ズボラが潜んでいるものです。あれだけ大事に書いていた日記が、いつしかミミズが這うような字になっているやつに向けています。私のことです。このペンで書いても同じでした。ペンのせいでも丁寧暮らしのせいでもなく、完全に私のせいです。
「いつなんどきでも使いたい」気持ちは本当にあるんですが、それを阻む理由がありまして。その話を次でします。
リフィルが660円という、なかなかシャレにならない現実
本体価格だけを見れば、このペンより高い筆記具は世の中にいくらでもあります。それ自体は別にどうということはない。
問題は「リフィル」です。
現在、税抜き600円。税込みだと660円。リフィルが、です。おい嘘だろ。ジェットストリームとかアクロボールの3色ペンが新品で買えちまう値段だぜ、兄弟。こいつは傑作だ。
気持ちよくさらさらと書けるペンなのですが、書けば書くほどお財布が寂しくなっていく。言うなれば「諸刃のペン」です。その筆跡は、金を失っていく跡なのかもしれない……。
とはいえ世界は広く、カランダッシュのリフィルなんかは余裕で倍値以上します。そしてこの世にはカルティエのリフィルというものが存在します。ジュエリーや時計のカルティエが、ペンのリフィルを売っている。そういうものが普通に跋扈している世界と比べれば、¥660はまだ庶民の射程内にある、ということだけ申し添えておきます。
つまりこういうことです。ただただリフィルを替えるためだけに、書き心地に引けを取らず日常使いに優れたペンが余裕で何本も買えてしまう金額を、定期的に投じなければならない。これが使い勝手に与える影響は、なかなか無視できません。
そりゃ普段はSARASAとかbLenとか使いますよ。ゼブラ好きなんですよ、私。あのコスパと書き心地のバランス、なかなか他では出せないんですよね。で、SARASAのリフィルは1本100円前後です。ファインライターの6〜7分の1以下。
まぁ考え方次第という面もあって。本体を一度買ってしまえば長く使えますから、100円ショップのボールペンを使い切るたびに買い替えるのと、トータルコストはそこまで変わらないという可能性はある。あくまで本体代だけの話ですが。
「リフィルで稼ぐ仕組み」というのは、インクジェットプリンターと同じ構造なんです、これ。本体は高いが一度買えばいい。消耗品で継続課金される。もちろん価格相応の品質と技術力が詰め込まれているはずなので、それ自体をどうこう言うつもりはないんですが、日常使いの筆記具として考えると……やっぱり贅沢品になるなぁ、というのが個人的な意見です。
だから使う場面を絞っているし、だからまだ一度もリフィルを替えていない。8ヶ月経って初期充填のブルーブラックのまま、というのは、そういうことです。「8ヶ月で一本も替えないって使わなさすぎでは?」という声が聞こえてきそうですが……まぁ、そうです。どうぞ玉の子のように大事に使っていると思ってください。
互換リフィルを探す旅に出るか、KOKUYOに課金し続けるか
¥660のリフィルを定期的に買い続けるしかないのか、と考えるのは自然な流れです。試したことはないんですが、一応調べてはみました。
一応、抜け道はあります。コクヨのWPシリーズにはファインライターの他に「ローラーボール」という兄弟機種がありまして、このリフィルとファインライターのリフィルは互換性があります。公式も認めている。つまりファインライターの本体に、ローラーボール用のリフィルが刺さる。
そしてローラーボール用のリフィルは、他社製の互換品がいくつか存在します。ゼブラ、三菱、ぺんてる……手に入りやすい国内メーカーのリフィルで代用できる可能性がある、ということです。
ただし。ローラーボールは0.5mmのボール式です。ファインライターとは仕組みがまったく違う。あの「永遠の一本目」的な書き味は、ローラーボールのリフィルを入れた瞬間に消えます。毛細管方式の樹脂チップならではの感触は、ボール式では再現できません。書き味を捨てて本体だけ使う、ということになる。
互換品を探そうにも、ファインライターの書き味が極めて唯一無二すぎて、KOKUYOにお布施をし続けるしかない……というのが正直なところです。この書き味を維持したままコストを下げる方法は、今のところ存在しないと思っています。
選択肢は結局のところ一つです。書き味を諦めてローラーボール互換品に乗り換えるか、KOKUYOにお布施を続けるか。どちらも今のところ選べそうにないので、このままでいようと思っています。
8ヶ月使って、まだ手放せていない
コスパは、正直よくないです。
日常使いの筆記具として推して考えると、やっぱり贅沢品になるなぁというのが個人的な意見です。SARASAやbLenが安すぎるのではなく、ファインライターが特殊なコスト構造をしている。そこは混同したくないところです。
でも、手放せないんですよね。
大事な文章を書くとき、なぜかこのペンを引き出しから出している自分がいます。奥さんへの手紙とか、子どもの成長記録とか。そういう「残したい文章」を書くときに限って、このペンに手が伸びる。理由を説明しろと言われると困るんですが、「このペンで書いた」ということに、なんとなく意味があるような気がしているんです。
コスパのいいペンは山ほどあります。でも「大事な文章のそばに置いておきたいペン」というカテゴリは、意外と空席があるんじゃないかと思っていまして。
コスパが悪いことは、8ヶ月かけてよくわかりました。それでも手放せていないので、コスパの悪さも込みで、これからも長く大切に使っていくつもりです。使う場面を絞って、丁寧に扱って、リフィルを替える日をちょっと楽しみにしながら。そういう付き合い方ができるペンが一本手元にあるというのも、悪くないなと思っています。
それでも、書き心地だけは本物です。
リフィルの覚悟が決まった方は、ぜひ。

コクヨ ファインライター WP(ブラック・ブルーブラック)
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ぺんてる サインペン S520
¥382(5本)
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